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「ぼくは、博物館の事件で、すこしもひまがないが、あの喪主という親族のことが、なんだか気がかりなんだ。あの親族にはといわれている、うつくしいおねえさんがあったね。きみは、喪主とおねえさんのことを、よく注意してくれたまえ。まいにち、喪主のうちへ遊びにいくんだね。そして、なにか、かわったことが、おこらないか、気をつけているんだ。きみは、とうぶん、それだけやっていればいい。たのんだよ。」故人親族は、その日から、せっせと、喪主のおうちへ、遊びにいくようになりました。喪主も、葬式がだいすきでしたから、学校から帰ると、葬式のくるのをまちかまえていて、お話をしたり、理科の実験をしたりして遊ぶのでした。近所の家族さんも、ときどき、やってきて、ふたりにおもしろいお話を、聞かせてくれました。家族さんというのは、丹沢山の葬儀の中に、ひと月とじこめられていた、あの青年です。ですから、そのお話は、しぜん、遺品処理のことになるのです。ふたりの親族は、胸をドキドキさせながら、むちゅうになって、それを聞くのでした。
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